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コーヒーの品種改良について


コーヒーの品種改良により、従来品種に比べて「生産性がよくなった」「味わいがよくなった」などと言われますが、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。コロンビア生産者連合会(FNC)の研究機関「セニカフェ」のガイタン博士にインタビューしました。



まずはじめにセニカフェについて教えてください。


セニカフェはコロンビア生産者連合会(FNC)の研究機関です。FNCは1927年、コロンビアのコーヒー生産者たちの手により設立され、2022年に95周年を迎えました。56万以上のコーヒー生産者が加盟しており、世界有数の規模を誇る農業関連NGOです。FNCは、フアンバルデスのロゴマークでも知られています。コーヒー通の方なら、100%コロンビアコーヒーを保証するカフェ・デ・コロンビアのロゴマーク(左)が入った製品や、FNCが輸出する麻袋に使われるFNCロゴマーク(右)を目にしたことがあるかもしれません。


セニカフェは、1938年に設立されました。研究農園として始まり、現在は、おそらく最も古く、世界で最も大きいコーヒーの農学研究の中心であります。バイオテクノロジーを駆使して丈夫で品質の良い苗木の遺伝子を研究したり、害虫や病気のコントロール、投資や労働の効率を改善して作物の生産性を高め、農園の経営を良くすることなどを研究しています。

また、コーヒーに限らず地域の自然環境についても積極的に調査や研究を行っており、施設内の昆虫博物館ではコロンビアのコーヒー生産地に生息する3万種類もの昆虫の標本を見ることができます。自然環境を保全しながらコーヒーの生産を行う、というのがFNCのポリシーであり、そのための自然環境や生態系の研究や調査も行っています。




なぜ、コーヒーの品種改良を始めたのですか。


以前のコロンビアコーヒーは、さび病という病気にかかる木が多かったんです。病気からコーヒーを守るために、毎年たくさんの農薬を使用する必要がありました。そこで、この病気への耐性を持つ品種を開発することが目的でした。


新しい品種により、どのような変化がありましたか。


コロンビアで2005年頃から導入された「カスティージョ」はさび病への耐性を持つ品種です。新しい品種への植え替えにより、農薬使用量が減り、コーヒー農家は殺菌剤にさらされる機会が減り、営農コストも削減できるようになりました。

また、生活者は、残留農薬のリスクが低いコーヒーを飲むことができるようになりました。さらに、生物多様性の保全の観点からもメリットがあります。セニカフェの研究によると、コーヒー農園内には約500種の昆虫がおり、特にコーヒーの花の受粉を助けるミツバチの生息環境にもよいと考えられています。

また、従来のコロンビア品種はコーヒーの木1本当たり年間5kgのコーヒーチェリーが収穫できましたが、カスティージョは年間6~8kgのコーヒーチェリーが収穫できるようになりました。また、栽植密度も上がり、1ヘクタール当り7,000本植えることができます。単位面積当りの収穫量が上がることは、森林を破壊して新しくコーヒー農園を作ることを回避できるので環境保全につながると考えています。また、従来のコロンビア品種はコーヒー豆のサイズが小さめでしたが、カスティージョは80%が大粒のスプレモサイズでしかも均一なため、輸出規格品の割合アップにつながっています。生産量が上がり、コスト削減も図れたことで、農家の収入は増え、生活安定化に寄与しました。


従来のコロンビア品種は、味わいに対する批判もあったと聞きました。


カップクオリティの向上も品種開発の目標でした。カスティージョはコロンビア品種よりも複雑なカッププロファイルを示します。背景には、カスティージョの開発に併せて、精選技術が向上したこともあります。パーチメントの発酵を完了させるベストなタイミングがわかるツールや、乾燥を終了させるタイミングが一目でわかるツールなどが開発され、普及したことで、クリーンカップだけでなく、複雑なフレーバーが出るようになりました。

精選プロセスでは、従来パーチメント1kg当り40Lの水を使用していたのに対して、0.5Lで済む技術が開発されました。これにより、水資源の保全の面からもサステナビリティの実現が図れました。



パーチメントコーヒーの発酵
を完了させるベストな
タイミングがわかるツール


乾燥を終了させるタイミングが一目でわかるツール



品種改良は非常に多くのメリットをもたらすことが理解できました。品種改良の大変なところはどのような点ですか。


1つの品種を開発するには、約15年の歳月がかかります。新品種候補の木の病気への抵抗性、収穫量、味わいを1本ずつ調査する必要があるためです。膨大な時間とコストがかかっています。



今後の展望についてお聞かせください。


さび病は菌類であり、ウイルスとは種類が異なりますが、コロナウイルスと同じように常に変異しています。そのため、さび病の変異に対応した新品種開発を行っています。近年は気候変動が悪化しており、長い干ばつ、長雨に対応できる品種改良も重要テーマと考えています。より味わいに優れた品種も開発していきたいと思っています。



ガイタン博士、ありがとうございました。
今後のコロンビアコーヒーの更なる発展を期待しています。


【ガイタン博士プロフィール】

コロンビアのロス アンデス大学で微生物学を学び、米国のコーネル大学で植物病理学の博士号を取得。過去 34 年間コーヒーの研究と革新を行ってきた。 2016年以降、コロンビア生産者連合会(FNC)の研究機関「セニカフェ」所長。従来の技術と最先端の技術を組み合わせることにより、農業の課題に関する問題を解決するための統合的アプローチを開発している。